ソバはタデ科の植物で、近似種に「赤まんま」と呼ばれるイヌタデがあります。
一般的に穀物はイネ科の植物で、種を蒔くと細い芽が一本出てきますが、ソバは大きな双葉が見られます。でも穀物のように利用できるので疑似穀物と呼ばれます。
生命力が強く全国どこでも育ち、実を付けることから俗に「そばは肥料が要らない」と言われることもあります。
昔からそばを作り続けている農家でもそばの種を蒔く前に特に肥料を入れないところは多かったようです。
にのまえがそばの栽培をお願いしている水府、金砂郷地方の伝統的な農業は5種類の作物を2年で育てて1サイクルとするものです。代表的な例が、大麦→たばこ→そば→小麦→大豆です。
この輪作の素晴らしいことは、それぞれの作物が同じ畑で毎年作られないという事です。連作障害も効果的に防ぎ、地力を保つ知恵の賜物なのでしょうが、お金を生むたばこの栽培も同じ畑では1年空けるという勇気には感服せずにはいられません。
この地方のたばこは水府煙草と呼ばれ、恩賜の煙草に使われた品質の非常に高いもので、一家の生活を支える優秀な換金作物でした。そのため質の良い堆肥、そして有機肥料がたっぷりと与えられましたので、たばこの栽培後の畑は非常に土地が肥えていまして、そこに植えられたそばは健康的に育つことができました。
大抵の畑は急な斜面にありますが、地質がもともと肥えやすく肥料分をつなぎとめる力が強いので、雨が降っても肥料分が流れ出すこともなく、前作の肥料で十分に成長できたのです。
さて、話は逸れますが、水はけのよい斜面の畑で育った山のそばと平地のそばの収量の違いを比べてみましょう。
どちらも土地が肥えていれば、平地のほうが圧倒的に収量は多く、一反(10アール)で4俵収穫できることも珍しくありませんが、山では良くて2俵です。
その主な違いは実の大きさで、その差は直径で1.5倍、体積で3倍ほどあります。
関東の平地は肥料の持ちが悪く、耕作に不向きと言われている黒土(黒ボク)で覆われていることが多く、この土地は化学肥料に頼らざるを得ないため、結果的に収量が上がるのかもしれません。