旧金砂郷赤土の伝統的な農業は、一枚の畑で、2年間で5種類の作物を作るという輪作でした。
大麦→煙草→そば
→小麦→大豆というようなサイクルです。
同じ畑で同じ作物を作り続けると地力は衰えますが、複数の作物を植えることは逆に土地を豊かにしていきます。連作障害を防ぎ、またそれぞれの作物が、土を砕き、窒素を固定し、夏の日照りや冬の強風から表土を守り、次の作物の苗を育む、と様々な役割りを担っているからです。
しかし、管理された畑で作物を作り続ける以上、有機物の投入と養分のバランスには気を使わなければなりません。
品質が良いことで知られ、恩賜の煙草に用いられた「水府煙草」は人々の生活を支える主な作物でしたので、特に大切に育てられました。その品質を上げるために良質の堆肥が惜しげもなく与えられました。タバコ栽培の後の肥えた土で育てられたそばは味も香りも優れたものでした。
堆肥自体はほとんどが有機物で植物の根から吸収される肥料成分はさほど多くはありませんが、土壌細菌を育て、細菌が土の団粒構造を作り、畑の土をふんわりとかさ高くする効果があり、健康な土壌を保ちます。
つまり、有機物が豊富な畑は、これから育てる作物に応じて必要な栄養素を追加するなど、土中の無機物の濃度を自由にデザインすることが容易なのです。