
玄蕎麦を手に入れるチャンスは年に1度だけです。にのまえでは秋に仕入れた1年分の玄そばを玄米保冷庫で冷蔵保管しております。
玄蕎麦は呼吸をしています。呼吸とは生物がその生命を維持するために、体内に蓄えられている有機物を分解してエネルギーを取り出す活動ですので、呼吸が盛んですと、蕎麦の場合はまずは糖質であるデンプンが分解され、甘みが減り、味が痩せてしまいます。そのため出来るだけ低温で呼吸を押さえたほうが品質の劣化を防げるのですが、あまり低すぎると暖かい時期に温度差で結露し、粉の品質を落としますので、10℃で保管しております。
冷蔵庫のない時代に夏を超えた蕎麦は甘みもなく、特に甘皮に含まれる成分が酸化し、蕎麦は黒ずみ、嫌なにおいを発し「犬も食べない」と言われるほどの品質だったため、新そばの時期が本当に待ち遠しかったことでしょう。しかし、保冷庫の中に入れられた蕎麦は、時間とともに熟成し、味が濃く甘みも増してきます。
新そばは「瑞々しく爽やかな香り」と称されますが、ややもすると水っぽくて青臭く感じることもあります。しかし、本来蕎麦は年を越えたころから味が落ち着き、保冷技術によっては夏を過ぎたころのどっしりとした味と甘く香ばしい香りを楽しめます。
にのまえでは現在2年、3年と熟成させた蕎麦を楽しんで頂く準備も始めております。