手作業による蕎麦栽培

イネ科の穀物は穂全体が同時期に成熟しますが、蕎麦は花の咲いた順番に実がつき、熟していきます。しかし、成熟した順番に脱粒するので遅めの実が熟するまで待つわけにはいきません。一般に「蕎麦は三粒黒くなったら刈れ」と言われるのはそのためです。また「蕎麦は刈られても3日は気付かない」とも言われ、蕎麦は刈り取り後も実の熟成が進む特徴があります。そのため早めに蕎麦を刈り取り、畑に立てて熟成させることで脱粒を防ぎながら全体を成熟させることができます。

ただそれは蕎麦の茎を根本から刈り取った時に限り、機械で実を収穫した場合は、半分以上が未成熟のままで乾燥まで行われてしまいます。

そのため、機械で収穫し乾燥したものは実の色がまばらで、全体的に黒々とした手刈り天日干しの蕎麦とはひと目で違いが分かります。

もちろん味や香りにも大きな差が出来ます。

機械で収穫、乾燥を行ったものは十分に成熟していないことに加え、強制的に乾燥させられているため、蕎麦固有の味も香りも弱く、新蕎麦時には「青臭く、水っぽい」味になりがちで、時間と共に品質は劣化するだけで年を越えるころには、まるで乾麺のようなソバの甘皮の酸化臭が気になるようになります。

手刈り天日干しで生産されたものは新蕎麦時から芳醇なそば独特の香りを持ち、時間と共に甘みが増します。新蕎麦時には爽やかな香りも楽しめますが、年を越えた辺りから濃厚な香りとどっしりとした旨みを楽しめるようになります。

旧水府村、金砂郷村(現常陸太田市の一部)でも、機械の入れる畑は数年前から農協が刈り取り乾燥のサービスを始めましたので、手刈り天日干しのものはほとんど無いといっても過言では無いでしょう。

ほとんどと書きましたのは、一部例外がありまして、機械の入れない急斜面の畑、つまり急斜面でも土が流れないほど水はけが良い畑では手刈りで収穫する他に方法はありません。つまり、手刈り天日干しの蕎麦とは、理想的な作業方法で収穫されたという他に理想的な畑で栽培されたという証でもあるのです。

にのまえで使用する玄蕎麦は技能の高いベテランの農家さんによって、そのような土地で栽培され、刈り取り、乾燥のみならず脱穀その他全て手作業で生産されています。

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